2013年08月12日

2013年全国学力テスト問題 中3数学Bより

 では, 前回に引き続き全国学力テストの中学3年生の問題についてです。


 紹介するのは, 大問 4 です。

 悠斗さんは, 次の 問題 を考えています。

 問題
120811a.png 右の図のように, 平行四辺形 ABCD の対角線の交点を O とし, 線分 OB, OD 上に BP=DQ となる点 P, Q をそれぞれとります。
 このとき, AP=CQ となることを証明しなさい。


 次の (1), (2) の各問いに答えなさい。

(1) 悠斗さんは, 次のような 証明の方針1 を考えました。この 証明の方針1 にもとづいて, AP=CQ となることを証明することができます。

 証明の方針1
120811b.png[1] AP=CO を証明するためには, △ABP≡△CDQ を示せばよい。
[2] △ABP と △CDQ の辺や角について, 等しいことがわかるものを探せばよい。まず, 平行四辺形 ABCD の性質から, AB=CD がわかるし, 仮定から, BP=DQ もわかっている。
[3] [2] を使うと, △ABP≡△CDQ が示せそうだ。


 この 証明の方針1 にもとづいて, AP=CQ となることを証明しなさい。

120811c.png(2) AP=CQ であることは, 右の図のように, 線分 AQ, 線分 CP をひき, 次のような 証明の方針2 を考えて証明することもできます。


 証明の方針2
130811d.png[1] AP=CQ を証明するためには, 四角形 APCQ が平行四辺形であることを示せばよい。
[2] 四角形 APCQ について, 平行四辺形 ABCD の性質から, OA=OC がわかる。
[3] [2] と仮定の BP=CQ を使うと, 四角形 APCQ が平行四辺形であることは, [   ] ことから示せそうだ。


 証明の方針2 の [   ] に当てはまることがらが, 下の から までの中にあります。正しいものを1つ選びなさい。

  対角線がそれぞれの中点で交わる
  対角線が垂直に交わる
  対角線の長さが等しい
  対角線が垂直に交わり, その長さが等しい


 前回紹介した小学6年生の問題もそうですが, 言葉で説明させる問題の工夫はなかなかのものです。
 ここで紹介した問題の場合, 実際に自分の言葉で説明させる問題は含まれていません(証明そのものをさせる問題は (1) にありますが)が, 次の点で我々教員(大人)に対して考えさせる問題となっています。
 1点目は, 1つの証明問題に対して, その証明方法は1つには限らないのだということを理解させる問題になっていること。実際の教育現場でも, 例えば中学生の証明問題といえば図形の証明ばかりで辟易しますが(個人的にはこのせいで本来の「証明とは」の部分が中学生に理解されていないと思っています), なおかつ「合同といえばわかることが3つ」「相似と言えば角が2つ」のようにいわゆる「パターン」で教えてしまっていることが多く聞かれます。実際には, 証明は「説明」であり, 例え数学の数式の証明であっても, 原稿用紙を使って日本語(数式を使わずに!)でわかりやすく説明したって良いわけです。また, 証明の際に使用する定理の類も自由であり, この問題はこの点に於いて評価できると考えます。
 2点目は, (2) において「自分で証明する」のではなく, 「他人の考え」を評価する問題になっている点です。よく「自分ではわかるけど, 君が何を考えているのかはわからない」という生徒・学生を見かけます。実は「他人の考え」の上に立つと言うことはそれだけ多くの知識や技量が必要になるのだ, ということをこの問題は教えてくれているのではないでしょうか。すなわち, 証明の方針2 を理解するためには, これを理解できるだけの知識が必要なのです。その知識こそが, この問題の答えとなっています。一見すると「考えさえる」問題のようで, 実はこの問題は「知識量」を問う問題である, ということです。

 実を言うと, 私個人としては, 他人が書いた証明を示しておいて「どうしてその証明が正しいと言えるか」あるいは「間違えていると言えるか」ということを説明させる良問はないかな, とコッソリ期待しています。これこそが, 現代に生きる若者にほんのちょっと欠けている部分ではないのかな, と思っています。

 なお, 中学3年生の問題では, 大問 2 で説明を数式で書かせたり, 説明文の形式を「〜〜〜は, ………になる」という形で書けという指定があったりという工夫がなされた問題が出題されています。問題そのものはお世辞にも良問とは言えない問題でしたのでここでは紹介しませんが, 出題方法の工夫という点ではなるほどと思わせるものでした。
 ただ, 大問 6 の碁石を数える問題は, あまりにわざとらしいと言いますか, 最後の (3) に説明させる問題があるのですが, 問題そのものが「作られた問題」感が強く(何といいますか如何にも「数学!」という臭いが強すぎると言いますか……), 個人的には良い問題とは感じませんでした。何でも感でも「説明させよう」ではダメなんですよね。

 説明させる問題ではありませんが, 大問 5 の黄金比に関する問題も余りにもわざとらしく, 私はちょっと嫌悪感すら抱きました。いかにも結果が黄金比になるようデータが作られており, 問題そのものというよりはその背景に「黄金比が人間が最も美しいと感じる比なんだ!」という問題制作者のコダワリの部分が強く感じられまして……
 他にも白銀比など, 人間が美しく感じる比が存在します。最初の段階で「えっ, 私が長方形作ったら, このヒストグラムに当てはまらないもの作っちゃったよ!」という生徒はどうするのでしょうか。個人の主張を問題を通じて押しつけるのは良くないな, と感じます……つまり, この問題を通して「自分はアブノーマルなのかな?」と感じる生徒もいるのではないかという心配をしてしまうワケです。
 最後には, 黄金比になる実在のものまで選ばせています……もちろん問題文中には「黄金比」という言葉も何も出てはきませんし, あくまでも縦横の比を算出させる問題にはなっているのですが, ここに登場するものが「エトワール凱旋門」「『竹取物語』の本」「『見返り美人』の切手」「パルテノン神殿」ですからね……出来過ぎじゃぁありませんか?

 というわけで, 問題文込みで紹介する問題は1問だけでしたが, 問題作りというのは難しいものですね。
 例によって, 学力調査問題等については このサイト から見ることができますので, 是非ご覧ください。
 今後, またどのような「面白い問題」で子供たちの頭を柔らかくしようとするのか, 楽しみです。
posted by ma-. at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 数字・統計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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