2012年11月25日

大きな数 (4/4)

 いよいよ宇宙全体の直径内に書き表すことが不可能な領域に達してしまった「不可説不可説転」。しかし, どれだけ桁数を増やそうとも, その数が「有限」であることには変わりがありません。

 今から20年前になりますが, フジテレビの深夜番組に「皆殺しの數學」という番組がありました。MC(?)は数学者の秋山仁。取り上げる話題がかなりマニアック(?)だったためとてもゴールデンでは放映できないような内容だったわけですが, それでも数学好きにはなかなか面白い番組でした。
 その番組のオープニングだったか, エンディングだったか, このような文句が必ずテロップとして表示されました。筆者も正確には覚えていないのですが, 「無限の中よりも, 有限の中に潜む悪魔をあなたはまだ知らない」みたいな文言でした。
 「無限の猿定理」も有名です。これも「無限」と銘打っておきながら「有限」の恐ろしさ(?)を見せしめるような問題です。サラッとでも良いので, 是非とも研究してみてください。

 さて, 果たして人類は, どの程度「有限の限界」に辿り次いでいるのでしょうか。恐ろしいような気もしますが, ちょっとだけ覗いてみることにしましょう。


 さて, 巨大な数を作る方法としてどのような方法が思いつくでしょうか。

(1) n倍

 かけ算は, 数を大きくするもっとも原始的な方法だと思われます。
 例えば, 1桁の自然数のなかで最も大きな「9」を取り上げてみます。足し算でこの「9」をどんどん足していくと, 18, 27, 36……と大きくなるのですが, 例えば100桁の数に到達するまでに果たして何回足せば良いのやら想像もつきません。
 これに対し, 「9」をどんどん掛けていくと, 81, 729, 8361……と一気に桁が増えていきます。100桁の数に到達されるにも, たったの(?) 104回かけ算するだけです。

(2) 累乗

 今のかけ算ですが, 結局同じ数を何度もかけ算すると巨大になることがわかりました。この計算は「累乗」という表示が可能です。例えば, 「9」を9回掛ける計算は 99 で済みます。
 そこで……

(3) 累乗の累乗

 はて? 何を言っているの? と思った方もいるでしょう。
 累乗が巨大な数を作る基本だというなら, その累乗の指数(右肩に乗せる小さな数)そのものを累乗にしてしまえばどうなる? と考えても不思議ではありません。
 例えば, 「9」でやってみます。999 は果たしてどの位の大きさの数になるのか調べてみると

999 = 9387420489 = ……

となり, 既に想像を絶する巨大数となります。実際にこの数は, 3億桁を超える数となります。
 それでも, 「不可説不可説転」には遠く及びませんね。ならば……

(4) 累乗の累乗を累乗

 ……もう想像つきましたでしょうか?
 そう, 累乗を何回も肩に乗せていけば, どんどん巨大な数を作れるのではないか, というわけです。

(5) クヌースの矢印表記

 さて, 一気にタイトルが「累乗」ではなくなりました。何回も累乗の「指数」を肩に載せていくと, どんどん表示が右上に膨らんでいってキリがないので, この表示をやめて別の表示で累乗を表そうというのがこの「クヌースの矢印表記」です。クヌースとはこの表示法を編み出した数学者の名前ですが, その見た目から「タワー表記」と呼ばれることもあります。
 例えば 34 を 3↑4 と表記します。たったのこれだけなのですが, いわゆる「小さな数」を用いないため表示が横に伸び, 表示しやすいというわけです。
 これを用いると, 先に出てきた 999 も 9↑9↑9 と簡単に(小さな数を用いることなく)表示することが可能です。
 ここで注意して欲しいことは, このクヌースの矢印表記は, 連続した場合計算順序は右側が優先であるということです。つまり,

9↑9↑9 = 9↑(9↑9) = 9↑387420489
9↑9↑9 ≠ (9↑9)↑9 = 387420489↑9

ということです。上は3億桁を超えるのに対し, 下は高々78桁の数です。

 さて, クヌースの矢印表記はこれだけではありません。この 9↑9↑9 のように, 同じ数を何度も指数として表示する計算を, この矢印をダブらせることにより

 9↑↑3

と表示できることとします。これが「悪魔の計算」のスタートです。つまり, 矢印記号の累乗のようなものです(わかりますか?)。
 例えば, 9↑↑8 は, 9↑9↑……↑9 と「8回」やれ, ということなのです。
 じゃ, もう1回矢印を追加すると……
 例えば 9↑↑↑8 は, 9↑↑9↑↑9↑↑……↑↑9 と「8回」やれ, ということになります。この調子で, 矢印そのものも何重も連続して表示できるように「工夫」したわけです。
 さて, 最後に登場した 9↑↑↑8 は一体どの位の巨大数となるのでしょうか。すでに想像を絶する桁数になることは言うまでもありません。

121125a.png


 もちろん, 「不可説不可説転」など既に「みにっちぃ数」に見えています。
 で, そのうち「↑」を何回も連続書くのは面倒だということで, 「↑↑↑」を「↑3」と, 今度はここに累乗を使ってしまおう, ということにしてしまいました。何と恐ろしいことでしょう!

(6) グラハム数

 もう新しい表記があるわけではありません。このような「書き表すことができずに想像するしかない」数の中で, 無意味に巨大にしたというだけではなく, 意味のある考察の対象となったことがある巨大数としてギネスブックに認められている数がこの「グラハム数」です。
 グラハム数そのものは, 先程までのように「9」を用いて作った数ではなく「3」を用いて作った数で, 関数 G(x) を

G(x) = 3↑x 3

と定義したときの

G64(4)

です。実はクヌースの矢印表記そのものなのですが, その大きさは……

121125b.png


もう, 完全にデタラメに大きな数です。しかし, こんな「とても常人には想像すら出来そうにないほどの巨大数」でも, 研究対象に上がったことのある「有限」の数なのです。
 数学とは, かくも恐ろしい学問でしょうか!

 ここまで来ると, 以下に「無限」(∞)と片付けてしまった方が楽であるか, と思っていまいます。
 「あ!? グラハム数だぁ? もう良いよ, 『殆ど無限大』で!」
 ……そういうわけにもいかないのです。
posted by ma-. at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 数字・統計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
深い記事、さすがですね。きっと最後は0から1までの実数の個数が来るだろう…と思っていましたが、見事にはずれました(^^;
Posted by 匿名きぼー at 2012年12月07日 01:38
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