2012年10月14日

大きな数 (1/4)

 まずは, こちらをご覧下さい。

 「フカシギの数え方」(クリックすると別ウィンドウで YouTube が開きます)

 すでに100万回以上再生されている人気動画ですから, ご覧になっていた方も多いかと思います。この動画では最後に大きな数の単位として「𥝱」(じょ)が登場しますが, この単位を聞いた事があったという方はそう多くないと思います。
 今回から数回に分けて, この「大きな数」について紹介していきたいと思います。


 現在日本で用いられている単位は, 一, 十, 百, 千, そして「万」となったときに新しい単位に移行する「万進」と呼ばれる単位です。つまり, 「万」の次は十万, 百万, 千万, そしていわば「万万」とも呼べる単位として新たに「億」があるわけです。万, 億, 兆……と新たな単位になるたびにその大きさが1万倍(104倍)になっている, と言うこともできます。
 英語だと, 千が thousand。そして ten thousands(1万), hundred thousands(10万)と10倍ずつされ, いわば「thousand thousands」に当たる数が million(100万)となります。いわば「千進」というワケです(実際にそのような呼び方はないかと思います)。thousand, million……と新たな単位になるたびにその大きさが千倍(103倍)になっている, と言うこともできます。
 実際, 世界の共通言語とも言われる英語でのこの数の表記が基本となり, 桁数の区切りを表す「コンマ」は3桁毎打つのが慣例です。近代日本では, 「万進」の流儀に従って4桁毎打つ流儀もありましたが, 今や使われることはないでしょう。例えば, 「1億」をそれぞれのコンマのルールに従って記してみると

 100,000,000 ……現代の世界では一般的な方法
 1,0000,0000 ……「万進」に合わせた方法

となり, 後者の方が実は日本の使われている単位には合致しています。珠算を学んでいると経験することですが, 珠算の世界では「京」(けい)までは登場します。実際「1京」をこの2つの方法で記してみると

 10,000,000,000,000,000 ……現代の世界では一般的な方法
  1,0000,0000,0000,0000 ……「万進」に合わせた方法

であり,「万→億→兆→京」という順番さえ覚えていれば明らかに後者の方がわかりやすいですよね。しかしその珠算も, 「そろばん」の盤面を見ると, 五だまと一だまの間にある「はり」にある「定位点」という目印はしっかり3桁毎に打たれていますから, 世界の荒波には勝てなかったということでしょうか。残念ながら今登場した「1京」も, 「6個目の定位点の一つ左の桁」と覚えていくしかありません。



 さて, 現在一般的に用いられている「万進」という呼ばれる単位も, 日本古来からずーっと同じ「1万倍毎」の単位であったわけではないようです。実際, 自分で「最も大きな数を表せるような効率のよい単位」を考えてみましょう。
 一, 十, 百, 千, 万までで1サイクルとします。すると, 「○○万」は「9千9百9十9『万』」の次が「1万『万』」であり, 「万」がダブってちょっと格好悪い事になりますよね。だから新しい単位を考えだそうというワケで「億」が登場します。
 「億」の1つ手前は「9999万9999」なので, 「○○億」は「9999万9999『億』」の次が「1億『億』」であり, 「億」がダブってちょっと格好悪いことになります。だから「兆」という単位を登場させることにします。
 この手法で生み出した「兆」を, 数字を並べて記してみると, 「億」は「1」にゼロが8つ付く数なので

 「1億」億
 →「100000000」億
 →「100000000」「00000000」
 →「10,000,000,000,000,000」(1016

となり, 現在使われている単位で表すと「1京」となり, かなりズレてきます。
 もう1回だけ続けてみましょうか。「1兆」(1016)まで作ったところでした。同様にして「1兆『兆』」とダブる数を「1京」とすると, 「1兆」は「1」にゼロが16個付く数なので

 「1兆」兆
 →「101616
 →1032

と, 「1京」はゼロが32個付く数ということになります。
 もうおおよその規則がわかってきたかと思いますが, この規則を続けて新たな単位を作っていくと, ゼロの数が倍々に増えていくことになります。「万」を1つ目, 「億」を2つ目と単位を数えていくと, 10個目の単位になったときには何とゼロが2,048個も付く超巨大数となり, 単純に大きな数を表す単位を作ろうとしたときには相当効率の良い方法となります。
 では, 何故実際にそのような方法で単位を作っていかなかったのでしょうか。これは私の想像ですが, きっと「覚えずらい」こと, そして「口頭で表現したときに大きさの感覚が掴みづらい」ことにあるように思います。
 例えば, 珠算の読上算を思い出してみてください。競技の難易度を上げるために, 同じ「16桁」の問題でも「7桁〜16桁」と「どの桁数が登場するかわかりずらい」よう幅を付けることが一般的です。この桁数設定だと, 例えば「千〜〜〜」と読み始めたときに, その数が8桁(千万)の数なのか, 12桁(千億)の数なのか, 16桁(千兆)の数なのか, 大きさの単位を読まれるまで判断できず, 競技者もその発声を待ってからそろばんに数を置いていくしかないのです。
 今作ってみた「効率の良い方法」で数を表したとして, 例えば「千兆〜〜〜」と始まったときに, その数が普通に「千兆」の桁数(この方法だと20桁の数)なのか, 「千兆〜〜〜『京』」の桁数(この方法だと52桁の数)の桁数なのか, 最後に「京」と言うかどうかまで20桁分の発声を待つ必要があるのです。20桁と52桁では大違いですよね。ですから, ある程度の桁数で無理矢理新しい単位を持ち出すようにする方が, 数の大きさを素早く伝えやすいということになるのです。
 先程「万進」という数の単位の進め方を紹介しました。これも, 「ある程度の桁数で無理矢理新しい単位を持ち出す」「無理矢理」を4桁毎に設定した方法である, と言い換えることができます。しかしこれが果たして「誰が見ても間違いなく一般的か」と言われるとそうでもないようで, 京までは「万進」で, それ以降は「万万進」と呼ばれる, 「無理矢理」を8桁毎に設定した方法で進めるのだ, とする意見もあるようです。

 さて, 日本の話ばかりしてきましたが, 実は西欧でも同じような「桁の上がり方」の問題があります。
 例えば英語で記載してみます(フランス語等でも同様です)。冒頭で thousand thousands を million であると紹介しました。ここまでは良いとして, その次の単位である billion は果たして幾つなのか, 国によって異なっているのです。
 現代日本で言うところの「万進」に相当する「千進」で表現するのが主にアメリカ。つまり「billion = thousand millions」というわけで, 10億(109)となります。ところが, いわば「効率」を求めて「万万進」に相当する「billion = million millions」とするのが主にイタリアやフランス。これは1兆(1012)となります。そう, 今でも国によってその大きさが異なるのです。
 イギリスも, つい最近とも言える1974年に, 政府が short scale(ここで言う「千進」)を用いるを宣言したので, 今ではかなり広く行き渡っている状況です。実は「千千進」は一昔前までは「イギリス表記」などと呼ばれるほどイギリスで一般的に使用された記法でした。
 billion の次は trillion。言わば「千進」だと「trillion = thousand billions」であり1兆(1012), 言わば「千千進」だと「trillion = million billions」(さすがに最高効率の billion billions ではありません)であり100京(1018)となります。



 今回は「前段」なのですが, 随分長くなってしまいました。おかげで, 冒頭で紹介した動画に登場する「𥝱」(じょ)についてもまったく触れられていません。
 次回, 実際にこの「大きな数の単位」について紹介したいと思います。そして, 皆さんが「これは大きな数になるだろう!」と思う数を実際にこのような単位で表現するとどの程度になるのか, そういったことにも触れてみたいと思います。
ラベル:大きな数
posted by ma-. at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 数字・統計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。