え? パーセントも割・分・厘もわかってる, バカにするな! って?
でも, そういう方も「100円の商品を, 5%引きしてから消費税5%を付けるといくらになるでしょう」なんて問題を出すと, 即座に「100円に決まってるじゃん!」と答えてしまいませんか?
そもそも「割合」とは, 「全体量」に対する分量を表す数値です。先程の問題の場合, この「全体量」が5%引きした時点で変わっている……即ち, 5%引きした金額が新しい全体量となっているため, 「5%」が表す金額が変化してしまうのです。
詳しく計算を書くと……
最初の「5%引き」 …… 「全体量」は元の100円。だから, その5%である5円を引くことになる。
次の消費税「5%増し」……「全体量」は95円となっている。だから, その5%である4.75円を加えることになる。
というわけで, まぁ端数をどう処理するかによりますが, ピッタリ100円には戻らないワケです。
さて, 新聞などをよ〜く見ていると, この割合の表記に「ポイント」という単位が登場することがあることに気付くはずです。これは小学校では習っていないゾ! と思った方, それもそのはず。そんな割合の単位は本体存在しません。
この「ポイント」という単位, 筆者はソースを発見する事ができなかったのですが, 報道協会か新聞協会か, そういった団体が新たな単位として用いたことがはじまりかと思います。どういう経緯かと言いますと, 例えば今の例でもおわかりのように, 割合の基準がいちいち変わるのは面倒だということで, すべて同一の基準(殆どの場合「最も最初の基準」)でパーセントを計ってしまおうという発想から来ています。つまり……
100円から, 5ポイント減って, 5ポイント増えたら, 元の100円に戻る
ということです。
例えば, 次のような報道がよく見受けられます。
今月末の調査によりますと, 内閣支持率は50%でした。これは先月末の調査から5ポイント上昇しています。
この場合, 「全体量」は国民全体(細かい事を言うと年齢とかありますが, 省略します)となることはすぐにわかるでしょう。つまり, 今月末の支持率は50%, 先月まつの支持率は45%であることがわかります。
これを
今月末の調査によりますと, 内閣支持率は50%でした。これは先月末の調査から5%上昇しています。
というと, 先月末の支持率は約47.6%程度だったことになります。なぜなら, 最後の「5%の上昇」の「全体量」は「先月末の支持率」となりますから, 先月末の支持率に5%を加えると今月末の支持率になる, つまり
47.6% × 1.05 = 約50%
なのです。そう, 100円問題と同様, 全体量が一定していないことが原因でこのような結果になってしまいます。
さて, 「%」と「ポイント」の違いは分かっていただけたかと思います。しかも, どう考えても「ポイント」の方がわかりやすいように思われた方が多いのではないでしょうが。
しかし, 実際の世の中の情勢を冷静に分析するとき, この「盲信」, いえ「過信」(?)はかなり危険なことが多いのです。実際, 「ポイントの方がわかりやすいだろう」とばかりにポイントばかり乱発する報道も見受けられます。
極端な具体例を挙げてみましょう。
(1) 10%が20%に上がる場合, ポイントで表記すると「10ポイントの上昇」です。
(2) 90%が100%上がる場合も, ポイントで表記すると「10ポイントの上昇」です。
しかしいずれの場合も, 割合の「前者」を全体量とした実際の「増加割合」は, (1) の場合は何と倍増!ですが, (2) の場合は「100%÷90%」で約11%の上昇ということになります。
おわかりいただけますか?
そう, 実際に「緩やかに増えたのか, 極端に増えたのか」を確実に示すには, やはり本来の割合表記である「%」を用いるべきなのです。
これからニュースをテレビや新聞でご覧になるとき, この「%」と「ポイント」の違いを冷静に読んでみてください。実際に「もの凄く増えた」などと表現された報道であっても実は大したことがなかったり……なんてことも, よくあります。
「言葉に騙されない。かといって, 数字にも騙されない。自分自身で確実な数字を見つけ出すこと」
統計を読み解くとき, 常にこのことを肝に銘じておかなければ, 筆者の「言葉」や筆者が用いている「単位」などに目くらましされるかも知れません。